どの科を受けるにもピアノがある

音大では、どの科を受けるにしろ、必ずピアノの実技試験が課せられる。だから、音大出身者は、みんな一応、技術的にある水準に達していると言えるだろう。しかし、この技術水準は、専攻する科(ピアノ、声楽、作曲、楽理、教育科というような)や学校によって、かなりの開きがある。現に、有名音大の作曲科や楽理科のピアノ・レヴェルは、ほかの音大のピアノ科に匹敵するとの定評。音大に合格するには、何をおいても試験曲が確実に弾けなくてはならない。いくら音楽性があっても、技術的に稚拙であれば、まず不合格。だから″音楽を楽しむ″なんてことは二の次で、技術の徹底的マスターを目指したレッスンを受けた人たちがほとんどだ。
殊に、有名音大のピアノ科出身者ともなると、小さい頃から多くの犠牲を払って(学校行事、一般教養、娯楽にいっさい目をくれず)、前述の音大教授方の、調教師的とも見える猛特訓に耐え抜いた筋金入り。したがって、皆さん技術面で相当の自信があり、「われこそ、ピアノ教師のオーソリティー」と、お鼻の高い人がどうも多そうな気配。そこで、この中に、かつて自分が授けられたテクニック一辺倒の厳しい訓練を、そのまま門下生にも施し、それについてこられない子供をアッサリ切り捨てる人が一部存在したとて、なんの不思議があろう。